ダイオキシンと塩化ビニル


目 次

1.ダイオキシン問題と塩ビ

国立公衆衛生院 廃棄物工学部長(工学博士) 田中 勝

不明な点が多いダイオキシンの危険性

無塩素のガソリン排ガスから検出の例も

塩ビをなくせば問題は解決するのか?

ライフスタイル転換への起爆剤

 

2.ダイオキシンと塩ビとの関係について

平成9年6月塩化ビニル環境対策協議会

ダイオキシンはさまざまな所で検出されている

都市ごみ焼却によるダイオキシン発生源はいろいろある

塩ビが無くても、塩ビを増やしてもダイオキシンの発生量は変らない

ダイオキシン発生を抑えるために塩ビを無くしても何らの解決にもならない

ダイオキシン発生の抑制は燃焼コントロールにある

 

3.外国政府・自治体の塩ビの使用規制と、規制撤回の状況

 


ダイオキシン問題と塩ビ  

国立公衆衛生院 廃棄物工学部長(工学博士) 田中 勝  

不明な点が多いダイオキシンの危険性

 ダイオキシンが極めて毒性の強い物質であることは確かですが、その危険性については、まだ分からない点がいろいろあります。慢性毒性や発癌性にしても実は分からないことだらけと書ってもいいくらいです。一般にはベトナム戦争の枯れ葉剤やイタリアのセベソで起きた事故(1976年、セベソの化学工場の爆発で大量のダイオキシンが飛散して彼害が出た事故)などからの連想で極端に危険なものと受け取られているようですが、枯れ葉剤の被害にしてもダイオキシンとの因果関係が完全に解明されているわけではありません。最近は焼却炉のダイオキシンが問題になっていますが、都市ごみや産廃の焼却でダイオキシンによる健康被害が発生したという事例は報告されておらず、水俣病のように疫学的にその危険性を証明したデータも存在していません。現在、癌による死亡率は全体の3分の1ぐらいに達しますが、これが本当に焼却場のダイオキシンが原因で増加したものなのかは究明しようがないのです。

 ただ、少なくとも現在の考えでは、ダイオキシンの暴露量には一定の閾値(いきち)があって、それ以下であれば人間の健康に被害は出ないというのが専門家の一致した見解です。その閾値(いきち)を厚生省は10ピコグラム(1ピコグラム=1兆分の1グラム)以下としており、焼却炉の排ガスの場合なら1立方メートル中80ナノグラム(1ナノグラム=10億分の1グラム)以下であれば、最悪の場合を考えても暴露量が10ピコグラムを超えることは考えられません。マスコミは80ナノグラムを超えていると大間題であるかのように言いますが、決してそうではないのです。

無塩素のガソリン排ガスから検出の例も

 ダイオキシンは焼却場だけから発生するのではありません。タバコでも火災でも、あるいは野焼きをしても、ものが燃える過程では、そのすべてからダイオキシンが発生すると考えて間違いないでしょう。塩素を含まないガソリンの排ガスからさえダイオキシンが検出されることもあります。この場合はエンジンオイルや空気中の塩素が発生源になっているのではないかと考えられます。どんなごみの中にもダイオキシン生成に必要な炭素、水素、塩素は必ずあるので、ごみを燃やせばダイオキシンが生成されます。

 このように、どこからでもダイオキシンが検出できるようになったのは、分析技術の精度が高まった結果であって、現代になって環境の中へのダイオキシンの排出量が増えたためとは考えられません。むしろ、各家庭でものを燃やしたり、野焼きや焚き火の多かった昔に比べれば、最近の焼却技術の発達で大気中への放出量、人間に暴露されるダイオキシンの量は減っている可能性さえあり、私はそのことを何とか数字で証明したいと考えています。

 それから、これは厚生省のガイドラインを作った時にも間題になったことですが、我々一般市民に暴露されているダイオキシンは、ほぼ97%が食品を経由して入ってくるのです。しかも、その食品の5割以上は輸入品です。つまり、日本の環境をいくらよくしても、輸入食品のダイオキシンを防がなけれぱ間題の解決にはならないということも考えておかなければならないことだと思います。

塩ビをなくせば問題は解決するのか?

 塩ビがダイオキシンを生成する原因物質のひとつであることは確かですが、今言ったように塩素系のプラスチックだけが発生源ではなく、塩ビをなくせばダイオキシン問題がすべて解決するかのような最近の議論は、やはりちょっと行き過ぎではないでしょうか。例えば、プラスチック類を燃やしている川崎市に比べて、分別している東京都23区の焼却炉でダイオキシンが減っているかというと、実態は決してそうではありません。

 要するに、ダイオキシンを減らすためには、きちんと完全燃焼してダイオキシンを分解すること、さらに排ガス中に残っているものはきれいに除去してやること、この2つ以外に方法はないのです。燃やす原料を管理することでダイオキシンが減らせると考えるのは過大な期待です。

 社会にとってある物質が必要か否かを判断する際には、その利便性と経済性、環境性、さらには代替品のメリツト、デメリツトを総合的に判断して、そのモノを排除するか残すべきかを考えるというのが正しい姿勢であるはずです。ダイオキシンの発生に寄与しているものはすべて排除しろという諭理は極端であって、私はもっと冷静な議論を社会に期待しています。

リスクコミュニケーションも重要に

 むろん、塩ビ業界も自分の作る製品がダイオキシンの発生源のひとつであるという責任は今後も持ち続けてほしいと思います。ごみは消費者が出すもので我々は関係ないといった態度は通用しないし、具体的にはダイオキシン対策を考えた完全燃焼の方法を業界全体として研究していくこと、また、処理費用や再生コストの面でも世界の業界が連携して共通の方法で分担していくといった地球的な取り組みが望まれます。世界のすべての塩ビ製品にそういう費用が含まれていて、国際競争力も平等という形を協力して作り上げていくことが大切です。

 また、時には市民運動の言い分にも耳を傾けてください。そして認めるべき点は認め、反論すべき点はきっちりと反論していく。そうした情報を一般に向かって分かりやすく着実に発信し続けていく努力、それがなければ一般の人々の不安を払拭することはとうていできないと思います。

 その意味で、広報活動は非常に大きな意味と必要性を持っています。実質的なリスクと市民が持っている概念上のリスクのギャップをどう埋めていくか、リスク情報をどうやって正しく伝えていくのかといった、いわゆるリスクコミュニケーションのための広報は、これからますます重要になってくるはずです。

ライフスタイル転換への起爆剤

 いずれにしても、地球環境間題は長期的視野で取り組むべき課題です。日本ではかつての石油ショックを契機に省エネ、リサイクルの取り組みが始まりましたが、その後、石油価格が低位安定して経済的に見合わなくなったこともあって、その必要性に疑間を唱える人も出てきています。しかし、40〜50年後に資源が枯渇することは絶対に避けられません。せっかく起こした省資源、リサイクルの火を消さぬよう、油断せずに持続していくことが大切なのです。

 そういう意味では、現在の廃棄物間題は非常に分かりやすいテーマだと言えます。埋立処分はもはや限界であり、一方では焼却処理もダイオキシンの問題などでこれまでのようにはいかなくなっています。では、一体どうしたらいいのか。結局はごみを出さない生活へ私たちのライフスタイルを転換していくしか方法はないのです。現在のダイオキシン間題は、そうしたリサイクル社会への転換を進める上でひとつの起爆剤になり得る可能性を持っていると思います。


ダイオキシンと塩ビとの関係について  

平成9年6月塩化ビニル環境対策協議会  

 焼却施設からのダイオキシン発生を抑制したり、無くしたりするために、塩ビ製品を使用しないようにするとか、焼却しないようにするとか、といった方法を取るべきだと主張する人もいますが、このような方法ではダイオキシンの発生を抑制することは出来ません。

 ダイオキシンの発生を抑制するためには、焼却物をより完全に燃焼させ未燃物を少くすることや、ダイオキシンが再合成し易い温度域を短かくすることなど、焼却炉の燃焼コントロールによって初めて実現できるものです。

 

1.ダイオキシンはさまざまな所で検出されている

 ダイオキシンは、物質の製造、ごみの焼却処理、自然環境中での物質の燃焼などさまざまな過程で、塩素成分と炭化水素成分の反応により、非意図的に極く微量に生成する化学物質である。

 したがって、ダイオキシンは、ごみの焼却だげでなく、ストーブのすす、タバコの煙、炭焼ステーキ、山火事などさまざまな物から検出されている。(文献1.2.3.

 

2.都市ごみ焼却によるダイオキシン発生源はいろいろある

 都市ごみの中には、塩素成分と炭化水素成分を含む厨芥類(ちゅうかいるい)、紙、木、繊維、プラスチックなどさまざまなものがあり、これらがダイオキシンの発生に何らかの関係をもっている。(文献4.

 

3.塩ビが無くても、塩ビを増やしてもダイオキシンの発生量は変らない

 ごみの中に塩ビが無くても、塩ビの量を増やしていっても、生成するダイオキシンの量には変化がないという科学的実験結果の報告が、数多く出されている。(文献5.6.7.8.

 

4.ダイオキシン発生を抑えるために塩ビを無くしても何らの解決にもならない

 ダイオキシンの発生を無くすために塩ビを使用しないようにするとか、焼却しないようにするといった方法では、前記の2項や3項で述べた事実から明らかなように、何らの解決にもならない。

 都市ごみ中の塩ビを除去しても、ダイオキシンの生成を無くすことにはならないということが、今日の專門家の結論である。(文献9.

 

5.ダイオキシン発生の抑制は燃焼コントロールにある


<別紙>   ダイオキシンと塩ビの関係についての文献

 

1.ダイオキシンの測定例

文献1.R.R.Bumbほか、「炎の微量化学一塩素化ダイオキシンの発生源」Science210 [No.4468]p.385(Oct.24.1980)

 暖炉のスス。家庭用電気集慶器、タバコの煙、炭焼きステーキおよび自動車排気で検出

文献2.岡島重伸「博士論文・ごみ焼却処理におけるダイオキシン類の制御に関する研究」(1992年)

 山火事によるダイオキシン発生の指摘

文献3.日本経済新聞(タ刊)平成3年8月2日付

 8000年前の海底堆積物から検出(愛媛大・脇本教授による)

 

2.ごみの塩素含有量の測定例

文献4.久保田宏(東工大)ほか、プラスチック処理促進協会報告書(昭和57年)

                          (単位:Kg)

成 分

ごみ重量

ごみの中の塩素量

厨・芥

349

4.3

296

1.1

33

0.4

93

0.3

プラスチック

122

4.3

ゴム・皮革

33

2.3

その他

74

0.4

合 計

1,000

13.1

 

3.ダイオキシン発生量は塩素(塩ビ・食塩等)の量と相関性がない

文献5.厚生省「廃棄物処理におけるダイオキシン等の発生メカニズム等に関する研究一昭和60年度〜平成元年度」

  プラスチックに関するコメント

・外国文献等でも示されているように、排ガス中のダイオキシン濃度とごみに含まれるプラスチックの割合について明確な相関は見られない。

文献6.米国機械学会研究報告シリーズ(CRTD)36

「廃棄物中の塩素と廃棄物焼却炉排ガス中のダイオキシンとの相関性」(1995年)

   PVCに関するコメント

・廃棄物焼却炉排ガス中のPCDD/F濃度の識別可能な変化と一定の改善が、廃棄物中の塩素量の減少によって実現するとは考えられない。

文献7.ニューヨーク州エネルギー研究開発公社ほか、米連邦、州政府機関(12団体)共同研究報告言「マサチュセッツ州ピッツフイールドに設置したVICON焼却炉による燃焼およぴ排出物に関する研究結果」(1987年6月)

  PVCに関するコメント

・どの測定箇所においても、廃棄物中のPVC量がPCDD/PCDF濃度に影響するという証拠は存在しない。

文献8.F.W.Karasekほか「都市ごみ焼却炉内のPVCからのPCDD/PCDF生成に関する研究」J.Chromatography270 p.227(1983)

  PVCに関するコメント

・PVC量を3倍にしても、PCDD/PCDF濃度は変らない。その発生は焼却炉条件に依存する可能性が大きい。

 

4.塩ビを無くしても解決につながらない

文献9.クリストファー・ラッペ教授の声明(1989年8月2日付)(スウェーデン・ウメオ大学環境化学科一ダイオキシン研究の第一人者)

  PVCに関するコメント

・ダイオキシン生成に対する都市ごみの影響については、特に、米国ピッツフィールド、ハンブルグおよぴミラノの研究が著名であるが、これらの研究から、PVCを廃棄物から除去してもダイオキシン生成量に影響しないと結論付けられる。

 

5.発生抑制は燃焼コントロール

文献10.厚生省ガイドライン

  ポイント

・完全燃焼を図るため、ごみの焼却温度、排ガス中のCO濃度・酸素濃度等を指標として、完全燃焼を目指した炉の構造、運転管理の実施。

・集じん器温度が300℃程度の時にダイオキシン類が発生しやすいことから、集じん器に流入する入口排ガス温度の低温化(→200℃以下)

・排出されたダイオキシン類の補集効率を向上させるため、ばいじん除去効果の高いろ過式集じん器(バグフィルタ)等の設置


3.外国政府・自治体の塩ビの使用規制と、規制撤回の状況

塩ビ使用規制

使用規制の撤回

1)ドイツ:Berlin市

 1990年に環境団体の圧力により、公共施設建設での塩ビの使用を規制。

 1995年10月、事実を調査した結果、ベルリン市では上院の投票により、再び塩ビが公共施設で使用できるようになる。

2)ドイツ:Bielefeld市

 1987年に、公共設備建設での塩ビの使用を禁止。

 1994年6月、塩ビが窓枠、配管、屋根、床材等、長期間にわたり使用されることによる環境面での利点を再評価し、規制を撤回。

 業界の塩ビ・リサイクルへの迅速な取り組みを、市が評価したことも規制撤回の一因。

3)ドイツの自治体

 グリーンピースは、101の市が塩ビの使用を禁止していると主張。

グリーンピースが塩ビを禁止していると言っている101の市のうち、いまも禁止していると回答したのは10の自治体のみ。

4)オーストラリア

 シドニーオリンピックの施設建設には、塩ビの使用を禁止するという報道。

 オーストラリア首相の管轄調査機関は、1996年9月に、「塩ビは環境的に、他の建設資材と同等もしくは優れている」との調査結果を発表。

 実際、シドニーオリンピック設備の建設に、塩ビが使われている

(ご参考)

5)イギリス

 1997年10月、英国政府の産業大臣は、「独立した証拠が、塩ビを使うことは安全で、生産中に発生する排気と廃棄物の処理は、環境庁により統制されていることを証明している。このことから、みなさんが安心していただくことを望みます。塩ビに関する争いは終結しました。」と明確な塩ビに対する支持を表明

6)スウェーデン

 スウェーデンの環境保護局は、「手にはいる科学的な情報に基づき判断した結果、塩ビは環境的に問題ないとの結論に達した。」と発表。

7)オランダ

 Public Health 担当の大臣は、「容器・包装材料として、塩ビは他の素材(ボール紙、セラミック、金属、紙、塩ビ以外のプラスチック)より、環境的な観点から魅力的で且つ健全な製品。」と表明。

  

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